「……何してんだ、オマエ」
「ば、ばかぁ!部屋入るときはノックしろつっただろーが!」



オレの彼女のオナニーはどう考えてもおかしい。




 オレの家の居候兼カノジョのの部屋に入った瞬間、オレの目に写ったのは。
ショートパンツにTシャツという軽装のが、抱きまくらに跨っている姿だった。
遊んでるのかと思って呆れたが、なぜかは妙に慌てていた。

「ん」

こんこん。と、取り敢えず要求通りドアを叩く。

「おせーよ今更!何の用だよ!」

やっぱりは妙に慌ててる。
てゆーか気が立ってる。
いつもは用事がなくても、というかノックせずに部屋に入ってきても何も文句を言わねーのに。

「何してたんだ?」

隠し事?と思うと、ちょっと気分が良くない。
は唇を尖らせる。

「いーたくない」
「なんで」
「なんでも!」

そう隠されるとますます知りたくなるのが人間である。
オレはベッドにいるに一直線に向かった。
逃げようと慌てて抱きまくらから降りるの腕をつかみ取り、「教えろ」と迫った。
コイツ、よく見ると顔が赤い。
目も、ちょっと潤んでる。

「カゼ?」
「……ちがう」
「じゃ、何」

ぐいぐいに迫って聞くと、は観念したように、ていうか逆ギレしながら白状した。

「う、うっせーな、お、おなにーしてたの!おなにー!」
「お、おなにー」
「そ、そーだよ、悪いかよ!リピートすんじゃねぇ!あっちいけ!」

そう言ってはオレのことをぽかすか殴って追い出そうとする。
オレが出て行ったら、続きするのか?
非常に気になる問題である。
第一、

「シたいなら、言や良いじゃねえか」

セックスならこっちはいつでも臨戦態勢に入れる。
なにも自分で解消しなくても、というかコイツだって結構積極的に誘うのに、なんで今更オナニーしてんだ。

「違うもん……。そうじゃなくてさ、その、自分の好きなようにしたいっていうかさ……」

は顔を赤らめながらモジモジという。
こっちはそれだけで準備完了した。

「いーよ、上乗って。そんで好きに動いて」

いわゆるキジョーイと言う奴だ。
オレはそこまで好きじゃないが、はケッコー好きだったはず。
ちょっと前、「右に行きまーす」とか「左に行きまーす」とかエレベーターガールみたいな事言いながらはしゃぐに跨がられた時は、バカバカしすぎて気が抜けて、すぐ出してしまった。
そしたら『はえーよバカ!』って怒られた。
そんなジコが起こりやすいから好きではないのだが、今日はオレちょっとガンバロウ。
照れてるというものには、オトコを奮い立たせる謎の破壊力あるのだ。
普段は胸も色気も無いどあほう女のくせに、だ。
オレはすっかりやる気満々での机の引き出しに置いてあるゴムを取り出す。
だが、

「そーじゃなくてさ……」

と、まだもじもじしていた。
どうした、珍しい。
今更恥ずかしがるようなことなんてオレ達にはねーはずだ。
そう尋ねると、は赤い顔を更に赤くして、

「る、るかわとじゃ、できないことしてんの!」

と言ってきた。
オレとじゃ、できないこと?
なんか、オトナのおもちゃとか使われてるんですか、さん。
ちょっとキンチョーしながら尋ねた。
『るかわよりコレのほーがきもちーもん』とか言われてそんなもん出された日には流石に落ち込む。
でも、はフルフル首を降ってそれは否定した。
そして、俯いてポツリと言った。

「ア、アタシのおなにー、ちょっと、変わってんの……。だから出てってよー!」

ナニソレ。どんなヤり方してんのコイツ。
またしてもベッドから追い出そうとしてくる
だがそんなことを聞いた以上、はいそうですか、と引き下がる訳にはいかない。

「見せて」
「はぁ!?」
「見せてくださいお願いします」

オレはに深々と頭を下げる。
一体、一体どんなオナニーをしてるんだ、
期待と興奮のあまりギンギンになっているオレ。

「や、やだよ!なんで見せなきゃ」
「頼む、あとで好きなもん買ってやる。なんでもいい。この間買いたがってた服とか」
「ちょ、ちょっと流川、目が血走っててコワイんだけどー!」

肩を掴んで迫るオレに、はとうとう観念したようだった。

「え、えっとぉ。だからー、そのさぁ、……抱きまくらにまたがってさぁ……。うわ!バカ匂い嗅ぐなサイテー!まだ今日は使ってねーから!」

から奪い取った抱きまくらは、まだ柔軟剤の香りがしただけだった。



 とりあえず、さんには実演していただくことになった。
は説明通り、まずは服も脱がずに抱きまくらに跨った。
最初にオレがこの部屋で目撃したのと同じ状態である。

「そんで?」

抱きまくらから如何ようにして刺激を得るのか。
オレは興味津々で聞く。
だが意外にもの回答は、

「こんだけ……」

だった。
やっぱり恥ずかしくなってできない、とか言い出す気なのか。

「そーじゃなくて!もー、ほんとにこんだけなの!」

顔を赤くしながら逆ギレ気味に言ってくるあたり、本当らしい。

「ちょっと邪魔すんなら出てってよほんと……、シューチューするんだから……」
「……シューチュー……」

女のオナニーには、そういうのも大切なのか。
オレはとりあえずを見守る。
はショートパンツから伸びたナマ足を抱きまくらに絡める。

(抱きまくらになりてー)

しばらく見ていたら、に変化が現れた。

「はぁっ……ぁっ……」

別に腰を揺らして擦りつけてる、とかではない。
だが、の表情は明らかに感じている時の顔になってきていた。
は更にぐっと足に力を込めて抱きまくらを絡めとる。

「や、やだ、ヤバィ、……い、イッちゃう……」

小声でつぶやいたの声をオレは聞き逃さなかった。
どうも、は抱きまくらに自分の股間を押し付けて、その圧迫感から快感を得ているらしかった。
そんなんでほんとにイケんのか?
半信半疑での様子をガン見するオレ。
だがオレの疑念とは裏腹に、はどんどんだらしのない顔になっていき、口を半開きにして喘いだ。

(あ、イク直前の、だ)

「あ……だめ、イッちゃう……。い、イクッ……!」

その言葉通り、は上体をビクビクとしならせ、「んっ、んっう」と口を抑えながら果てたのだった。
はあはあと肩で息をしながらは真っ赤な顔でこちらを睨みつけた。

「ハイ、シューリョー!も、いいでしょ、見て満足したでしょ!大したもんでもなかったでしょ!わかったら早く出てけ!」

枕を投げつけながら、矢継ぎ早に言う

「待て、イッた意味がよくわからん」
「なんでそんな真剣に聞いてくるのー!?モーヤダ!!」

は真っ赤になった顔を手で覆い、「バカバカ出てけ出てけ!」と頭を振った。
確かに、確かに変なオナニーだった。
だが、何がそんなに気持ち良いのか。
そこを知らないかぎりオレの気持ちの収まりがつかない。
今、オレの目にはが突然イッたようにしか見えなかった。
それって自転車のサドルとかでも結構イイカンジなんですか?とか聞きたい。
もし肯定されたら、オレは今度から自転車に乗ってるお前をそういう目でしか見れなくなる。

「ば、ばか!そんなわけあるか!」

そうか、じゃあなおさら説明してくれ。
のオナニーは下手すりゃ授業中でも出来そうな勢いだった。
これは否定してもらわなきゃ困る。
でなきゃオレは睡眠時間を削ってでも授業中に起きてがオナニーしてるんじゃないかといちいち確認しなければならなくなる。
これは気が気じゃない。
今のままじゃ、オレにとってお前は「突然イッちゃうエロ彼女」だ。
頼む。説明してくれ。
このままじゃ、オレのムスコも本当に収まりがつかない。

「なんでこーゆーときだけジョーゼツなのよぉ……!ばかぁ!」

は半泣きだった。
だがオレはを傷つけてでも、コイツのオナニーを解体しなければならなかった。



「だ、だからさぁ、あの、抱きまくらで……アタシのクリを押し潰すの……」
「それってキモチイイの?」
「う、うん……。なんか、柔らかくて、ムズムズしてくんの……」

はもう一度さっきと同じように抱きまくらを足で絡めとる。

「そんで……、足で、その、圧迫する強さを変えて……はぁっん……」

イッたばかりで敏感になっているのか、さっきよりすぐにエロ顔を晒す
ガン見するオレ。

「で、そんだけじゃ……ちょっと、ノれないから……、自分でわざと言うの……。『イッちゃう』って……」
「ナニソレ」
「うっさいなー!とにかくそーなんだよ!」

だいたい顔ちけーよ!とに言われて、オレはすっかり前のめりになっていたことに気がつく。
いや、見るだろ。
カノジョのオナニーだぞ。
とりあえず、のオナニーは自己暗示的な盛り上がりが必要不可欠らしい。
「イッちゃう……、イッちゃう……」と呟くにつれ、目がトロン、としてくる
ああ、これマジなやつだ、とオレも理解した。
あとはもう、勝手にカラダが痙攣して、またもや体を反り返らせる
エロい、エロすぎる。
確かに、抱きまくらから得られる快感は、人間では再現不可能だろう。

「わ、わかった?そーゆーことだから。もうホント勘弁して……」

潤んだ目で睨みつけてくる
恋人にオナニーを見せた挙句解説しなければならないというのは、よくよく考えたらかなり恥ずかしいことだ。
だがしかし。
恥じらうを見て、「じゃあオレもオナニーしてきます」といって引き下がるような真似はできなかった。

「手伝う」
「はぁ!?て、手伝うって何を……?」
さんのオナニー、テツダイマス」
「意味わかんねーよバカー!!」

そう言ってオレは、嫌がるのオナニーの手助けをすることにした。



 とりあえずの上半身をひん剥いた。
下半身は脱がないらしい。
直接触れるとむず痒すぎてオナニーにならないらしかった。

「あ、アタシのペースでやらせろよ?マジでアンタは今日手伝いだけだから!」
「ウス」

オレに与えられた役目。
それは『の乳首をカリカリすること』。
はこのオナニーがノリにノッテくると、まずは自分の乳首を徹底的にいじめるらしい。
その後はお待ちかね、直接クリ弄りたい放題タイムに入るらしい。
こいつがちょっと焦らされるのが好きという性癖を持っていることに気がついたのは、今日一番の収穫かもしれない。
の背後から、の平らな胸へと手を伸ばす。
こいつ、胸はねーが乳首はピンクで割とかわいいんだ。
ツンと尖ってて上向きで、本人の性格をよく表しているといえる。
指先でカリッとの乳首をひっかく。
と言っても、バスケをするオレの手は基本的に深爪気味だ。
痛くはない。
そのもどかしい感じがのお気に入りだというのは、もうとっくに知っていることだ。

「ふぅっ……ん……」

の漏らした吐息に興奮して、オレはの乳首を左右に開くように引っ張った。

「きゃあっ」

『きゃあっ』って。
普段意識して低い声を出して相手を威圧しようとする不良女、の素の声は、割と少女めいている。
それが漏れ聞こえるときは、本気で感じている証拠だ。
オレはいい気になり引っ張った乳首を親指と人指し指で摘んで捏ねてやった。

「やっ、やぁっ!」

は思わず、という風にオレの手をつかむ。
だがオレはそんな女の腕力でどうにかなるようなもんじゃない。
お仕置き、と言ってオレはの乳首を捏ねていた指先に力を入れて、ギュッと潰してやった。

「あぁっん……!」

気持ちよかったのか、イッてもないのに上体をそらす
はそのままオレに寄り掛かる。
オレの方を振り向く。

「あ、あたってんだけど……」

そりゃそうだ。
テメーがオナニーしてるのを見てたらコーフンするに決まってんじゃねーか。
はそのまま、ちょっと恥ずかしそうに、注文を追加してきた。
曰く、

「ね、アタシの手、後ろに縛って?テーコーできないの、ちょっと燃えるかも」

うっとりとニヤリ、両方の表情を作る
こいつやっぱ変態だ。
マゾっ気がある。
「もういっそセックスしませんか?」と尋ねようとしたオレを見抜いてか、先に釘を差してきたのはだった。

「流川はアタシに手ぇ出すなよ!あくまでも手伝いだからね!」
「……ウス」

焦らされてるのは、オレの方か。



「ひぃん!や、やだぁ、イッちゃう、イッちゃうぅ……!」

手を後ろで縛られてからのはなかなかに見ものだった。
まず、オレのちょっとした乳首への触れ方にも敏感に反応する。
というか、そこから積極的に快楽を得ようと、上半身をくねらせた。
ぎゅっと引っ張ってやったり、逆に押しつぶしてやったり、デコピンしてブルブルと震えるの乳首を観察してやったり。
思わず口に含んで舐めてやると、が慌てて「それはダメ!」と言ってきた。

「なんで」

チロ、と舌先ですっかり固くなったの乳首を撫でる。

「だ、だってぇ、出来無いじゃん……ひとりじゃ……」

クセになっちゃったら……どーすんのよ。
はちょっと不満気に言った。
確かに、乳首を舐めるという行為は、人間がふたり以上いて初めて成立する行為だ。

「なるほど」
「あっあ、バカっ!」

オレは調子に乗っての真っ赤な乳首を舐めた。
クセになっちまえばいいんだ。
『オナニーじゃもうイケない。流川じゃなきゃイケない』
そう言っておねだりしてくるを想像して、想像の中くらい『楓』って呼べよと思って、唇で乳首を喰む。

「ひあぁぁ!」

もう、はオレに文句を言う余裕が無いくらいキモチヨクなってきているらしかった。

「い、イクぅ……!」

の余裕を失った、上ずった声が漏れる。
ムズムズと足を抱きまくらに絡ませて、圧迫度を高めているのがわかった。
普段はチームの司令塔として響いているの声が、今は自分を盛り上げる暗示として使われていることにオレは興奮を覚えた。

(そーいや、自分で『イッちゃう』って言うとイケる、つってたけど……)

他人に言われたら、どーなんだ?

湧き上がる好奇心。
オレはの乳首から唇を離し、の前面に回りこんでいた上体を起こす。
そして、今度はの耳元に唇を持って行き、

「ひゃぁ、い、イク……!」
「イケ、イッちまえ」

と、囁きながら耳を舐めてやった。

「ああ!?や、やああああんっっ!!!」

途端に、ビクンビクンとまたもや体を弓なりにしならせる
イッてる時に自分に追い打ちをかけるように乳首責めたりはしないだろうな、コイツは。
と思って、オレはあえて反り返ったの体と逆方向に、引っ張って伸ばすようにの乳首を摘んでやった。

「やぁ!?やだぁ、なんで、なんでっ!?」

は普段と違う感覚に、すっかり困惑しているようだった。
調子に乗って、オレは更に乳首をこねくり回して、言ってやった。

「ほら、イケよ」

そしたら、予想通り。

「ひぃんっやあ、だ、だめっ!ああぁんっ!!」

は連続で絶頂を迎えた。
ヨシ、なんかよくワカンネーが良いチョーシだ。
オレは気分を良くして、今度は抱きまくらの先端を掴んで、の股間によく食い込むように押し付けてやった。

「や、やだぁぁ!るかわ!それホント駄目だってぇぇぇぇ!」

ガクガクビクビクと、もう何回イッてんだか分かんねーくらい小刻みに震える
本気で慌ててるのがわかる。
だが、こいつは今縛られて手は使えない。
ひたすら抱きまくらの上で悶えることしか出来ないのだ。

「ば、ばかぁ!アタシのペースに合わせろって……ひゃあん!」

ほら、もう乳首を舐めただけでこんな甲高い声が上がるようになった。
オナニーのお手伝い、大成功だ。



は連続でイキ果てた後、「もー好きにして……」と言わんばかりにベッドに体を投げ出した。
縛ってやった手をほどいてやったが、クリいじりタイムには入らないらしい。

「ねー、アンタのせーなんだからね。今日何もしなくていー?」

のぐっしょりと濡れたショートパンツを下ろしていると、はマグロ宣言を出した。
まあ仕方ない。今日はスる予定なかったし、あくまでもこれはのオナニーの延長の行為だ。
挿入の許可がもらえただけでも、喜ばしいことなのだ。

「ん」

とりあえず頷く。
挿入するためにゴムをつけていたら、は「ほんとどーしよ……」と頭を抱えた。

「何が」
「……乳首舐めたりとか……るかわの声じゃないとイケなくなったりとかしたら……やばくない……?」
「……そしたら次も手伝ってやる」
「バカ。それじゃセックスと変わんないじゃん」

があまりにも可愛いことを悩んでいるので、オレはゴムをつけてるだけでイキそうになった。
ダメだ、早い。それはあまりにも早過ぎる。
必死に数学の小池の顔を思い浮かべて、一旦自分を落ち着かせる。
……よし、大分萎えた。

「いくぞ」
「んっ。ふっ、ああぁん……」

いつもよりぐっちょり濡れているのナカ。
オレは正常位で、あえてゆっくり、ゆっくりと入ってやった。
マグロ宣言を出したはあくまで快楽に身を委ねている。
オレの好きに動いていいらしい。
オレは乳首を舐めながら、どんどん奥に押し入ってく。

「ひうぅぅん!!」

の白い首が仰け反る。
既にイキまくって敏感になっているは、挿入されただけでイッたらしい。
の唇を奪い、ゆっくりピストン運動をはじめてやった。
それに連動して、びくんびくん、と最早何されてもキモチヨクなってしまうようになったらしい、暴れるのカラダ。
オレは膨らみきったのクリトリスを擦ってやる。
更に喘ぎ声を大きくして、のたうちまわって絶頂を迎える
それに合わせて締まるナカ。
やばい。これはすぐイクに決まってんだろ。
コイツに奉仕してやった10分の1位の時間で、あえなく射精してしまうオレ。

「はえーよバカ」
「うるせー」

2回戦目だ、決まってんだろ。



 それから。

―――コンコン。

「るかわいるー?」

夜、コイツがオレの部屋を尋ねる時の用件が、一つ増えた。

「おー」

筋トレ中だった。
部屋に入ってくるをとりあえずベッドに座ってろ、と視線だけで指示する。

「ねーねー。それ終わったらさぁ」

アタシのオナニー手伝ってよ。

は言った。
セックスではない。
コイツがひたすら気持ちよくなれるために、オレが立ち回れ、とは要求してるのだ。
まあ、最終的にを気持ちよくさせる手段の1つとして、「挿入」は認められてるからあまり違いはないといえばないのだが。

「おー」

クソ、どこの世界に自分の彼氏をオナニー道具扱いする女がいんだ。
筋トレしながらオレはココロの中で悪態をついた。
オレの彼女のオナニーはどう考えてもおかしい。