そんなこんなで。

「2万本だぁ―――っ!!!終わったぁ―――っ!!!」

飛び上がらんばかりに、というか飛び上がって喜ぶシュート合宿参加者たち。

(マジで2万本やったこともスゴイけど……、ホントに、入るようになったのが……スゴイ)

は皆から離れてひっそり涙ぐんでいた。
そんな水曜日。



71.バスケットと少年




 桜木花道が2万本のシュートを終えた時、ちょうど合宿に行っていた残りのバスケ部の男子たちが帰ってきた。
妙に自信あり気な桜木花道を見て、一体どんな特訓をしたんだ……と不思議がる男子たち。
主将・赤木の号令で男女とも解散になった。
いよいよIHも間近である。


「お、流川。おっす。久しぶり」

モップがけをしていると、流川が話しかけてきた。
毎日顔を合わせている相手だから、1週間会わないと感覚としてはもう「久しぶり」である。
流川もモップをとりに用具入れに向かうが、はそれを止めた。

「あ、いいよ。疲れてるでしょ。先行ってなよ」
「…………」

流川はいつもの目つきでをギロッと睨み、睨んだ後、何か言いたそうな顔をした。
だが、彼は結局何も言わずに体育館を出て行った。

(なーんか、うまくいかねーなー)

1週間経っても、気まずさは変わらない。
本当は、桜木のこととか、話したいことはいくらでもあるのだが。
それを少しつまらなく思うが、IHまでの残り3日間でどうにかなりそうなもんでもないな、とは思った。
女子は、IHに行けない。
出場ができないという意味ではない。
応援にも行けないのだ。
学校から応援のための遠征費用は出なかったのだ。
昨年まで弱小だったバスケ部に、出場もしない女子たちを広島に送り出すまでの予算はなかった。
行きたいなら自費で、ということになると、やっぱり広島は遠い。
そんなんだったら練習でもしてたほうがマシか、ということで男子たちがIHに行ってる間、女子はいつもどおり練習だ。
安西は不在だが、顧問の鈴木が残ってくれるらしい。
とりあえずこれが、公立である湘北の実にしょっぱい現実であった。

(ま、別に男子たちだっていつまで広島にいられるかわかんねーし)

広いコートをモップがけしていると、桜木花道と赤木晴子が何やら騒がしい。
ちょっと会話を拾ってみると、どうやら桜木のバッシュに穴が開いているらしい。

(頑張ってたもんなぁ、桜木)

は、相変わらずちょっと泣きそうになっていた。
そしたら、サボってねーで掃除しろ、と黛に怒られた。
がいない間、女子部はすっかり黛に政権を取られてしまっていたらしい。



 そして、3日後。
男子たちは広島へと向かっていった。

「湘北ー!ファイッ!」
「オー!」

女子達は、いつもどおり練習だ。
夏休みの間はいつもより筋トレや体力づくりに時間が取れる。
どうにかキャプテンに返り咲いたは、今日も女子部を率いて練習に励む。
練習を終えて各自がストレッチをしていると、水戸洋平がひょっこりと現れた。
どうやら忘れ物をしたらしい。

「アタシ、鈴木センセーに男子の部室のカギ借りてくるよ」

はそう言って職員室に向かった。



「ああ、さん。ちょうど良かった」

学校のセンセーって夏休みの間何してんだろ、と思いながら職員室に向かうと、顧問の鈴木が自席でお茶を飲んでいた。
向こうもこちらに用があったらしい。
は鈴木のデスクに向かうと、「何だそのアタマは」と見知らぬ教師に怒られた。
それを適当に受け流し、は鈴木に用事を聞く。

「こんなお知らせが届いたんですが、女子の皆さんで出てみてはどうでしょうか?」

鈴木はバスケの大会要項が書かれたプリントをに見せた。
なるほど、夏休みの間に神奈川で行われる大会があるらしい。
出場資格は中学生からとなっている。
出場するチームのレベルはバラバラだろうが、この規模なら最終的には強いチームとも当たれるかもしれない。

「へー。こんなのあるんだー。どもっす。考えてみます」

はプリントを受け取る。
さすがに4人で出場できる大会ではなさそうだった。

「最近は『3対3』で行われる大会もあるそうですね」

の発言に、鈴木はそう返した。

「へー、センセ、よく知ってんね」

鈴木はあまりバスケに詳しいように見えなかったので、は意外に思った。

「赤木くんたちの頑張りを見ていたらね、お飾りとはいえ少しはバスケの知識を持っていないとな、と思いまして。まあ、よかったら出場を検討してみてください」


はもう一度大会の要項を見る。

(5人……。5人かぁ……)

どーしたもんかね、とはとりあえずその紙をバッグにしまった。
そして鈴木に事情を説明して男子部室の鍵を借り、職員室を後にした。



 体育館に戻ると、客人が2人増えていた。
赤木晴子と……、

「えと、ごめん。誰だっけ」
「藤井です……。さん、同じ中学だったでしょう……?」

マジか、ごめんなさい。
はあまり中学の頃の記憶が無い。
後半ほとんど学校に行かなかったのが原因でもあるが、それ以前に他人に興味を持っている余裕がなかったのだ。
バスケ部の人たちは流石に覚えている、と言いたいが。
今会ったら、どうだろう。
自分は何人チームメイトを覚えているだろうか。
赤木晴子以外、はっきり言って自信がない。
少ししょんぼりしている藤井を「まあまあ」となだめている晴子を見ていたら、は(ああ、そういえばこんな子いたかもしんない)と思った。
しばらくして晴子が、水戸とに向き直ってお礼を言った。

「あたしが言うのは変だけど……でもそういう気持ちなの」

晴子は、きっと桜木もひとりじゃここまで出来なかったと思う、と告げた。
だから、ありがとう、と。
は、そんな晴子の気持ちが痛いほどわかった。
ほんとうに不思議な男だ、桜木花道。
やってることも言ってることも滅茶苦茶だけど、彼のバスケをしている姿はなぜか人の心を打つ。
ありがとう、はの気持ちでもあった。
晴子はこの合宿を通して中学のバスケ部を思い出したのだろう。
ワンハンドシュートを特訓したのだという話を水戸に告げた。
そういえば、も昼休みに何度か教えた思い出がある。
あの時は、なぜだろう。
そんなに人に教えるのが楽しいとか、思ったことがない。

(いや、そもそもあの頃は……)

そういう意味でも、桜木花道は特別な存在なのかもしれない。

(IH終わったら、またアイツにバスケ教えたいな)

彼のことを考えると、不思議と心が穏やかになる。
生まれて初めての経験だ。

(これが……ぼせー?)

は、晴子も同じ気持ちを抱いているんじゃないかと思って晴子を見遣る。
だが、意外にも、彼女は少しだけ暗いトーンで話した。

「少しだけ……嫉妬も感じるの」

その一言に、は初めて赤木晴子という人間を知ったような気がした。
どうしてだろう、3年間一緒だったのに、彼女がまるで見知らぬ他人に見えた。
そして同時に、違う、と思った。
自分が、周りを知ろうとしなかっただけだったんだ、と。
赤木晴子だって人間だ。
いつもニコニコして周りとのバランスを保ってくれているような子だったが、彼女だって試合に負ければ悔しいと思うし、自分より強い人を見れば羨ましいとも思うだろう。
は、急に自分が恥ずかしくなった。
中学の頃、自分のことに必死で、チームメイトも思いやらず、大会も途中で放棄するような形で部活をやめた自分のことが。
晴子だって、いろんな事をに思ったはずだ。
無責任だとか、裏切り者だとか。晴子以外のメンバーだって、思っていたはずだ。
でも、それを全て責めずに、ひたすら自分を受け入れようとしてくれる彼女は、なんてオトナなんだろうと思った。
中学の頃からずっと、周りに気を配れる子だったのだ、この子は。
かと言って、今更謝ったって取り戻せるようなものでもないし、が中学の頃の部活メンバーをほとんど忘れているというのは事実だ。
だから、せめて。

「おい、。いつまでサボってんだよ!」
「ごめんごめん、今戻る」

いま、この部活の仲間を大切にしようと思った。
部活だけじゃない。
クラスとか、友達とか、そういうのを。
水戸は、「人には向き不向きがある」と晴子のバスケの才能の無さをからかった。
落ち込む晴子を見て、は「でも、ほら、赤木さん細かい作業だって率先してやってくれるし、周りのことよく見れるし、そういうサイノーはあると思うよ」とフォローした。
藤井もうんうんと頷いている。
「きっといつか、晴子の本当に向いていることが見つかるわよ」、と援護射撃をしてくれた。
「そうかしら……?」と少し立ち直った晴子を見て、はちょっとだけ思いついたことを言った。

「あ、ほら。マネージャーとか、いいんじゃない。赤木さんベンキョー熱心だし、向いてるよ。……そんじゃ」

は再び黛に怒られる前に女子の方に戻っていった。
晴子はその言葉に何を思ったのだろうか、俯いて、再び水戸に「……ありがとう」と言った。



 その日の帰り道。

(フジイ……藤井……誰だっけ……)

自転車に乗りながら、はとりあえず一生懸命記憶のカケラをかき集めていた。
晴子が「藤井ー!」と、あの鈴の音が鳴るような声で呼んでいたことは覚えている。
何で覚えているのかって言うと、意外だなって思ったからだ。
晴子はのことは「ちゃん」と呼ぶし、部活の子たちはだいたい「ちゃんづけ」で呼んでいたからだ。
そんな彼女が、部活外の友人のことを苗字で呼び捨てにしているのを見て、晴子の知らない一面を見たような気がしたのだ。
ちなみに、赤木晴子は入部した当初からみんなに「赤木さん」と呼ばれていた。
も周りに倣ってそう呼んでいて、いつの間にかみんなが苗字で呼ばなくなった頃もずっと「赤木さん」で通していた。
なんか、名前の呼び方を変えるタイミングを失っていただけなのだが。
中学生って、そういうどーでもいーことを気にするし、アタシもホントどーでもいーことばっか覚えてんなー、とはちょっと自分に呆れた。

(あ、藤井サン、思い出したかも!)

そうだ、彼女は中学の時髪が長かった。
今と大分印象が違う。
そして、赤木晴子と、部活が始まる前になにかこっそりおしゃべりしていたのをは見ていたのだ。
そう、晴子が真っ赤な顔を手で覆って、何か、彼女に告白していたのだ。

『スゴイかっこいい人だったの……!ひとりでダンク決めちゃってね……!』
『この前の試合の?男子負けちゃったわよね』
『そう、そうなんだけどね、相手の中学校に…………。好きに、なっちゃったかも……』

コイバナだー!と中学生の時のも察した。
恋をしたことのないは、それでもそれがどんなものか興味があって、ついつい二人の会話に聞き耳を立てたのだ。

『その人の名前わかるの?晴子』
『もちろんよぅ!……流川くん、って言うの』

――キキーッ!

(え……)

は思わず何もない道で急ブレーキを掛けた。
事細かにその時の記憶を思い出していたら、とんでもないことまで思い出してしまった。
晴子は、部活のメンバーには、そういう恋愛話とかを持ち込まない子だったのだ。
多分だけど、部活つながりで好きになった相手だったから部活のメンバーには言わなかったのであって、彼女のことだ。
クラスメイトのことを好きになったら、クラスメイトには相談しなかったんじゃないかな?とは思った。
だからは、晴子に好きな人がいたことを隠されたことに、それほどショックは受けなかった。
いや、それよりも……。

(あ、赤木さんって……)

るかわのこと、好きなの?



「何を今更」

翌日、女子バスケ部しかいない体育館で、「赤木晴子が流川楓を好きかもしれない」というの仮説を発表したら、黛繭華に一刀両断された。
藤崎も「今更何言ってんだこいつ」と言いたそうな目でを見ている。
驚いているのは朝倉だけだ。
「ええー!!そうなんですかー!!!」と、眼鏡がずれていることにも気が付かず大袈裟なリアクションを取ってみせた。
マジかー、とは頭を抱える。
そーいう大切なことは早く言ってくれ、とは思った。
そうしたら……そうしたら、多分、流川の家には行かなかっただろうし、流川と登下校するだなんてことはしなかったはずだ。
にだってそこら辺の遠慮というか、女子特有の暗黙のルールを守る気は一応ある。

「赤木さんは流川に片思いしてて、桜木は赤木さんに片思いしてるから、桜木はやたら流川のこと敵視してるんだよ」

女子バスケ部で唯一、4月当初から部活に入っていた藤崎が男子バスケ部の状況をわかりやすく整理してくれた。
桜木が晴子に片思いしてることはも流石に見抜いていたが、ナルホドそういうことだったのか、ともようやく状況を飲み込んだ。
黛もとっくに知っていたらしい。
驚いているのは相変わらず朝倉だけだ。
「ええー!そうだったんですねーーー!!」と目を丸くして驚いている。

「本人から直接聞いてなかったとはいえ……なんか悪いことしちゃったかな……」

もこの事態には流石に凹む。
よりによって自分が、昔から色々と良くしてくれる赤木晴子の想い人の家に転がり込んでいるとは。
と言っても、が今流川家に家出していることは誰も知らない。
黛と藤崎には、が少々オーバーすぎるくらいに落ち込んでいるように見えただろう。

「赤木さん、別に流川のことどうこうしてやろうってつもりじゃなさそうだし。いいんじゃねえの別に。登下校くらい」
「そうそう。ちゃんと流川の間に何もなければいいんだよ」
「そ、そっか……。そっかなぁ……」

まあでも、2人の言うとおりだ。
赤木晴子は別に流川の彼女になりたいだとか、そういうつもりで流川に迫る気は今のところなさそうだ。
あとは……そう。

(アタシと、流川の間に。何もなければいい話だ)

こちらには大変自信がある。
あの流川が、誰かを好きになるとか全く想像がつかないからだ。
もし、流川が「好きな女ができた」とか言い出したらどうしよう。
多分自分は、お姉さんと一緒に流川を指差して爆笑してる。
そうだ、それでいいんだ。それでいこう。
そうして今日も、いつも通りの部活が始まった。
男子たちは今頃1回戦だろう。
せめて1回くらいは勝ってほしいよね、と冗談を言いながら、女子たちも練習に励んだ。
昼過ぎに、主将の赤木剛憲から顧問の鈴木へと電話があったらしい。
1回戦突破、とのことだった。



 夜七時を回った湘南の海は、昼とは全く違う静けさに包まれている。
と、言いたいところだが、夏休みということもあって、夜の浜辺はあちらこちらでうるさく騒ぐ学生やコワイおにーさんの集団やらがいた。
まあ、昼に比べれば大分静かだ、ということで。

「はーい、じゃここらでやろうか。サキチィこれに水汲んで来て」
「うん」

女子バスケ部で、納涼花火大会だ。
は持ってきたバケツを藤崎に渡し、藤崎は海へと駆けて行った。
黛は割りと豪華な花火のセットを抱えていて、朝倉はローソクを買ってきてくれた。
藤崎が戻ってきたところで、準備が整う。

「じゃあまゆまゆ、火つけて」
「おー。アサヒの持ってきたローソク、なんか太くね?」

そう言いながら、黛は自分にライターで砂浜ににセットしたローソクに火をつけた。
その瞬間。

――シュボボボボ。

「ごほっ、うわ、アッチ。おいアサヒ!てめえの持ってきたローソクなんかおかしいぞ!」
「えええ!?ど、どうしてでしょう?普通にローソク買ってきたはずなんですけど……」

ローソクは力強く燃え、それに見合うだけの煙をもくもくと吐き出した。
藤崎が持っているローソクの袋を確認してみると、「高火力ローソク」と書いてあった。
普通の花火とかに使う洋ローソクと違い、なんらかのパフォーマンスに用いられるものらしい。

「逆にどこで買ってきたんだ……」

朝倉はキレた黛に追いかけられ「ごめんなさいー!」と平謝りしている。
朝倉のボケっぷりは今日も絶好調だった。

ちゃん、大変。このローソクすごい勢いで短くなってってる」
「うわマジだ!おーい!まゆまゆもアサヒも戻ってこーい!さっさと花火すんぞー!」

藤崎は花火セットを広げる。
明らかに、ローソクの短くなる速度に見合わない量だ。

「しょうがない、二刀流だ!」
「僕も僕も」

と藤崎は口では「しょうがない」とか言いながらも大量の花火を両手に持って火をつけてはしゃぐ。
戻ってきた黛と朝倉もそれにならい、贅沢に花火を消費していく。

「たく、ローソクひとつまともに買えねーのかテメーは」
「うう、すみません~。まさかあんなに勢い良く燃えるとは思わなくて……」

藤崎はやけどしないように気をつけてながら、再び花火に着火しようしている。

「もうちょっとやんわり燃えてくれないかな、君」

藤崎はローソクにそんなふうに話しかけているが、ムダだろう。
ゆっくり燃えて欲しいと願っても、そのローソクはそういうローソクなのだ。
どんなに周りが言ったところで、そんなふうに燃えることを止めることは誰にもできない。
そのローソクは、激しく燃え尽きるために生まれたローソクなのだから。

「あーあ、まだ花火いっぱいあるのに消えちゃったよ」

が残念そうな声を上げる。
「アサヒ……」と黛は睨みつける。
「ひぃ、わ、私コンビニで買ってきますぅ!」と朝倉はプレッシャーに耐えかねて言った。
結局、「アイツひとりに買いに行かせると、どんなものを買ってくるかわからないから」と言いながら黛も買い出しに行くことになった。
なんのかんので黛はやっぱり面倒見がいいのだ。
藤崎とは、その間海を見ながら留守番をしていた。

「サキチィ」
「?」
「アタシね。ケッコー楽しいんだ、部活。サキチィはどう?」
「僕も、楽しいよ。変な奴ばっかだけど」

そうだね、とは笑った。
男子は今頃どうしてるだろうか。
は詳しく知らないが、明日の試合はたしか相当強いところと戦うことになっているはずだった。

(桜木頑張ってんのかなぁ、ジャンプシュート……。あ、あとついでに流川も)

さざなみの音が聞こえる。
黛と朝倉が戻ってくるのが2人の声でわかった。
どうやら朝倉がまた何かやらかしたのだろう、黛の怒鳴り声が聞こえる。
まあまあ、と黛をなだめて、花火を再開する。
みんなで花火をやっていて、はこの部活が好きだ、と改めて思った。
男子みたいに、とはいかなくても、もっとみんなで試合に出たり、勝ったりできたら楽しいんじゃないかな、と思った。

「よし、そんじゃ置き型のいくぞ!」

すっかり機嫌を直した黛が、一番派手そうな花火に点火する。
小走りで花火から離れて4人で見守る。
しばらくすると、火薬に火がつき、シュバババと後を立てながら花火は激しく噴出した。

「おおー」
「キレイですねー」
「これあと5本くらい同時にやりたくね?」
「危ないよ」

思い思いの感想を口にする女子達。
その後も花火をやり尽くし、片付けが終わって解散する頃には9時を回っていた。

「じゃあ、また明日」

そう言って皆、それぞれの帰路につく。
明日も部活だ。
は充実感と楽しかった思い出を胸に、流川家へと帰っていった。



 桜木花道がリハビリが必要になるほどの大怪我を負ったと聞いたのは、その翌日の事だった。